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【動画・開催記】百瀬フェローシップセミナー「戦間期ポーランドの言語政策に関する基盤研究 いわゆる『クレスィ諸法』を中心として」(2022.9.1)が開催されました。

2022.09.28

ニュース

 2022年91日(木)、百瀬フェローシップセミナー「戦間期ポーランドの言語政策に関する基盤研究 いわゆる『クレスィ諸法』を中心として」が対面とオンラインのハイブリッド形式で開催された。北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターは、共同利用・共同研究拠点として公募による事業を行っている。今回、その柱の一つである若手研究者助成プログラム「百瀬フェローシップ」において、第1回フェローに採択された貞包和寛氏(日本学術振興会特別研究員PD)による、中東欧の言語政策研究に関する成果報告が実施された。

 

※セミナーの模様を動画で視聴することができます。こちらをクリックしてください。

※百瀬フェローシップの詳細については、こちらをご覧ください。

 

 貞包氏の成果報告は、戦間期ポーランドにおいて1924年に成立した3つの法律(「国家語法」・「法務言語法」・「学校法」)を分析し、東部地域(クレスィ)の民族的少数者(ルシン人、ベラルーシ人、リトアニア人)に対する言語政策を検証した。氏によると、戦間期ポーランドに関して、歴史研究と比べて、言語政策は広く研究されているわけではなく、これら「クレスィ諸法」の「法律の原文に立ち戻って独自の分析を行なう」ことで、当時の言語政策を明らかにすることを目指すという。

 ヴェルサイユ体制の確立と外圧、当時のポーランド民族主義の情勢という2つの背景を説明し、国勢調査をもとに民族的少数者の状況を説明しながら、クレスィ諸法の検討を行った。その結論として、氏は、クレスィ諸法の総合的な性質として、少数者政策であるのは確かだが、保護政策というより同化政策の一環と位置付けられ、行政・司法・教育における「基盤となる言語」を国家語としてのポーランド語に確立することに主眼があったのではないかと指摘した。

 参加者からは、法律成立過程におけるロシア帝国やオーストリア=ハンガリー帝国など他国の法律の影響やドイツ占領の影響、法律成立による人口動態への影響、言語政策と都市農村別・宗教別人口の関係などについて、質問があった。とても濃密な議論が交わされ、今後の更なる研究の発展を期待させる成果報告会となった。

 

井上岳彦
人間文化研究機構人間文化研究創発センター研究員
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター特任助教